思考停止

映画、本、音楽、など

アイドル私的年代記、あるいは感情教育

個人史なるものを人に向けて説得的に伝えるのは大変難しい。自家撞着的になるというのもそうだし、そもそも自分がそんなに人に興味を持ってもらえる人間なのだろうかという感慨も、今から個人史を書こうとしている俺の胸中に湧き上がってくるのを抑えきれな…

2022年総括

毎年年末にはその年にあったことを備忘録的に書き留めることにしていて、去年は逮捕や精神病院、院試などが重なってかなり精神的に追い詰められていたから、他の年との相対化を否応なくさせられたのをよく覚えている。「今年は忘れられない一年だった」とい…

黛冬優子に関する一考察、あるいは……

みなさんこんにちは、ツァッキ(@PalatiumLentum)です。何気にブログでTwitterアカウント名を公開していなかったかもしれません。意味はないのですが、ブログの方が本名での活動(ライター、同人誌など)に近いので、紐づけるとちょっとまずいかな?と思っ…

君がバーボンと煙の味を知る頃に――Ado論

・序――葛藤なき=負い目なき痛みの歌姫 フレディ・マーキュリ―のヘルメスマイクがライブ・エイドの会場を沸かせたとき、よもやその30年後のウェンブリースタジアムの上空を韓国の「アイドル」グループ、BTSのジョングクが舞うことになるなどとは誰も思いもよ…

僕にとってのアルチュセール:面接試験のためのメモ(教育、主体、良心)

院試まで4日になった。周りの人からは院試は熱意とコネだから大丈夫だよとか、君のフランス語力じゃ厳しいんじゃないとか、諸説ある。フランス語を見ると心臓がバクバクして視野が狭くなる。今更語学でできることはないんだし、当たって砕けるしかないとは思…

ホロライブは早くHoloEUを作れ

ツイートの延長線上の話です。 HoloENができたのは確か2020年夏ごろと記憶している。森カリオペの「失礼しますがR.I.P」を聴いたのが大学5年で精神病院に入院したときだから大体合ってると思う。不思議なもので、僕は高校時代受験がなかったので英語はモーム…

C'est ma faute.:ぼくのぐだぐだじゅけんせんそう・その壱

「君さあ、やる気あんの?」 結局人は努力と継続しかないわけである。駆け出しでコケるにしても、その人がどれだけ頑張って目の前のことに取り組んできたか、コツを掴むためにどんな工夫をしてきたかでミスに対する周りの視線も変わってくる。僕は努力の仕方…

中庸への意志 2021年総括

この総括を書き始めてからというもの、毎年毎年「今年は特別な一年だった/忘れられない一年だった」と言っている気がする。考えてみれば、その一年が自分にとって特別でかけがえのないものであることなんてその都度自明であるはずなのに、それを言表するこ…

Spotifyの今年聴いた曲ベスト5にレビューをつけてみる

院試対策と同人誌の準備を同時進行、なおかつ季節性の鬱病に臥せりがちな12月の幕開けにこんな現実逃避のエントリをしたためている場合ではないのであるが、どうせひっくり返ったところでいきなりフランス語ができるようになるわけではない。今日も過去問の…

祖父を悼む――作家Feについての試論:『草葬』、デュシャン、ウエルベック

序 今にも落ちてきそうな空の下で 祖父が亡くなった。死因は誤嚥性肺炎。元より摂生も運動もしない性質で、僕が知っている祖父の姿は埼玉にある集団住宅で正月に帰省してはエロビデオの話か過去の知人の悪口、時折母に小言を言って場をピリつかせて父と大ゲ…

個人的シャニマスシナリオランキングレビュー・部門別ベスト――すべてが焦土になる前に

1.日陰の花 オタクは臭くてキモいです。リピートアフターミー。オタクは臭くてキモいです。オーケー、ヴェリ・グッド。この文章は、三峰結華役の声優・成海瑠奈の一連の騒動を受けて書かれている(無論、紫月や田鶯のそれも問題含みである)。なぜ、声豚に限…

NO FUN(息抜き)

久々に個人的な話をしよう。とはいえ、俺は文章を書くときはいつだって個人的な話しかしていないのだが。 なんで公に文章を発信できる場所を別に持ってるのにこのはてなブログアカウントを大学1年生のときから使い続けるかといえば、ここはいわば痰壺だから…

日記、あるいはなんとはなしの彫琢

僕は躁鬱病で統合失調症である、みたいなことを書くのにもいい加減飽きたし、鬱状態とか幻視(夢幻様状態)の症状それ自体にも飽きた。正直いつからこうなっていたのかも覚えていないし、元からこんな感じだったような気もする。合唱コンクールの指揮者で一…

ノクチルとシーズについて:アイドルを観念論のおもちゃにしないためのエッセイ

本文は、当初の構想段階では三部構成として「無軌道――ノクチル」の後に文章を統合する章が来るはずだった。が、僕の体力不足と、テーマ的に無理があるということで、それはナシにした。全ボツにするには割とおもしろいなと思っているので、載せておく。『OO …

「巨乳」のイマジネール――オタクの欲望の貧困

・「みんな巨乳が好き」か? オタクの男で、巨乳が好きではない場合があるとしたら――これは意外と語られてこなかった問いである。男はみんな巨乳が好き。老いも若きも揃って巨乳巨乳の大合唱。もちろん、「いや、俺は貧乳が好きだ。貧乳はステータスだ」と『…

鮮烈――『アイドルマスターシャイニーカラーズ』のための詩篇

・序文 あんまり僕はアイドル論だのポップカルチャー論だのを書きたくないのだ。そもそもこんなもの馬鹿らしいのだから。到底アイドルマスターと哲学なんて結びつきようがないし、大体「〇〇と哲学」などという試みはいくつもなされその度に向こう側に消えて…

人生のミサ

今僕は朝の陽ざしが眩しい六畳一間でクリームパンとアイスのしろくまを平らげ、狭い台所で一服して来し方行く末を考えていた。書くことはいっぱいあるはずなのに、どうにもうまく頭が回らない。前どういう風にして文章を書いていたかを思い出せない。思考の…

ねえ、摩美々ちゃん、よかったら僕と――愛の告白にうってつけの日

シャニマスに限らず僕らオタクは簡単に恋をする。それは古くは涼宮ハルヒや泉こなただったかもしれないし(オレは長門有希だったとか僕は柊かがみだったという諸氏は別にそれはそれでよい、もしかしたらそちらの方が「正しい」のかもしれないのだし)、ごく…

アイドルマスターシャイニーカラーズに捧げる讃歌 断章1

「それ」は始動する。静かに、しかし確実に、唸る重低音を上げながら、動き出す。我々は再び書き出さねばならない。黛冬優子の言う「バカバカしい世界」を真面目な顔して生き延び続けるためには、書き続けなければならない。充溢したパロールもエクリチュー…

七草にちかについての注意喚起

本記事は『アイドルマスターシャイニーカラーズ』というソーシャルゲームの「七草にちか」というキャラクターに関する言及を含みます(決定的にはネタバレしていません)。特にレトリカルな文章ではありません。 管理人は紐づきのTwitterのパスワードを失念…

君の中に、君以上のものを

やあ、きみはぼくが誰か分かるかな?そう、れんとぅむであり、ツァッキであり、早良香月であり、であり、であり、、、云々。まあ、誰でもない。本当のぼくなんて、ぼくにも分からない。だって、この20数年間、ぼくと思い込んでいたものが、ぼくじゃなかった…

ラグジュアリーへの羨望、あるいは擬似スキゾ:2020年総括

22歳の秋、まさに恋燃ゆる季節、僕の前に服と本とセックスを愛する女性が現れた。「ねえ、私はどんなセックスをしそう?」そう言いながら鈴の音のようにころころと笑う彼女は花柄のブラウスを身に纏って、そのコケティッシュさで僕をコケにしているかのよう…

2020年12月11日の日記 副題:炭酸飲料

「ツァッキ(元も子もないが、俺の昔のアカウント)さんの今の文体はマチュアな感じになりましたけど、しばらく前のブログは良い意味で粗削りでしたよね。だから女の子のファンとかいたんじゃないですかね」 真っ白いWordの画面を開いて、タバコを吸ったりYo…

Vtuberで学ぶメンヘラ学概論~潤羽るしあの場合~

・メンヘラは状態ではなく、性質である 「概論」と銘打っているが、本記事で取り上げるのはメンヘラと呼ばれる人々にいかに同化し、そして愛するようになるのかの応用的な話である。メンヘラという言葉の定義をするのは眠たい話なのでしないことにしよう。た…

卒業論文、先走り公開

昔から僕はそうというかADHDの衝動型ゆえの特性なのか分からないが、待ち合わせにも早く着きすぎるし、提出物もめちゃめちゃ早く出したがる(出せるわけではない)しでこらえ性が全くない。というわけで(どういうわけだ)、一応教授との間でこれで完成とい…

ほんとうの言葉はいつも間に合わずに――哲学科の思い出

そうだ、これは夢、起きたら僕は20歳の5月になっていて、僕は世界で一番好きな人と付き合っていて、色んな哲学書を読んでいて、一生懸命フランス語を勉強して、そしてベルクソンだかアルチュセールだかで大学院で研究者の道に進むんだ……書いてて胃が痛くなっ…

ミューザック評論の試みあるいは缶詰音楽の旨味:その1

一人暮らしを始めると食生活が有意に荒れる。実家では料理の上手い母親が作る肉料理にホカホカの炊いたご飯、サラダには生ハムなんか入ってたりして、勿論味噌汁は赤味噌で、お腹いっぱい食えるわけだが、一人暮らしになると面倒なのでボウルにレトルトのポ…

(性的)不能者の仮想転移(杏子昆布/@ans_combe氏への応答=責任)

先日、杏子昆布(@/id:ans_combe)氏にマシュマロを飛ばし、興味深い返答を頂いたので本来であればツイートにて応答するべきことであるが(議論がオープンになり見えやすい為)、環境により付すことがあらかじめ不可能な脚注をそれぞれのツイートに対する応…

早良香月Vtuber批評まとめ

Vtuber批評がまた盛り上がっている。よいことだと思う。私は今まで4つのVtuber論を書いてきた。それぞれに簡単なコメントを付し、改めて挙げておきたいと思う。この全てに、私は私のVtuberについての何かを賭けていることが読み手に伝われば幸いである。 ・2…

大森靖子、語りの未遂――ポップネス・悪徳・複雑なもの

・はじめに 現在精神病院に入院、静養と投薬治療で嘘みたいに頭の中がクリアになった。パソコンの持ち込みはできないようなので、ポメラからスマホに移してのブログ投稿になった。やっぱり人は簡単に絶望してはいけないと同時に、簡単に絶望させてもくれない…